原少年の漫画家に対する憧れは、とどまるところを知らない。どこからか情報を仕入れては、仲間たちと結託して、行動にうつす日々……。
デザイン科の高校だったからね。漫画家になりたいやつはオレ以外にもゴロゴロいたの。
休みの日になると、「藤子不二雄先生と石ノ森章太郎先生が、同じビルにいるらしいから、そこに行ってみようぜっ!」とか言って、気の合う仲間たちと、足を運んだりしていたね。
ネットがない時代に、その情報を入手できるだけでも、すごい。情熱があれば、なんでも叶うのか……。
その時はね、ちゃんとたどり着けたの。でもね、けっきょく恥ずかしくて入れない(笑)。ビルの中で「何階だろうね」とか言うだけで、帰ったね(笑)
大友克洋先生も一緒。「吉祥寺にいる」っていう情報だけを仕入れて、友達と行ったんだ。でも駅に着いて、友達と「こんなに広いんじゃ分かるわけないね」って(笑)
次は『AKIRA』などで世界的に知られる大友克洋のもとに。それは、後に原哲夫にとって、ゆかりの地となる “吉祥寺”という場所に、足を踏み入れるきっかけとなる1日だった。
今でも覚えているよ。とにかく、どこに行けばいいかぜんぜん分からないから、友達と2人で、東急デパートの屋上に上がったんだ。上から「大友先生はいったい、どこにいるんだろう」って、漠然と街を見渡してた。
当然、大友先生の所には行けなかったけどね、その時に「いつか、オレも漫画家として成功して、吉祥寺に住む」って屋上で誓って、帰路に着いたんだ。
吉祥寺の空に誓った、その数年後、『北斗の拳』が大ヒットとなり、憧れていた漫画家の仲間入りをする原哲夫。だが、それはまだ少し先の話である……。
(その4につづく)